どうもAraiです。図らずもしょーもないツイートでバズってしまいました。せっかくだしみんなにブログを宣伝して読んでもらおう!と思いましたが、そういえば一般に幅広く読んでもらえるようなキャッチーな記事が全くないな…と気付きちょっとライトな記事を書いてみることにしました。せっかくテストドライバーという仕事をやらせていただいているので、今回は皆様が知りたいそこんところ?を書いてみたいと思います。好評であればシリーズ化していこうと思いますので是非コメントや布教をお願いいたします。
テストドライバーとは?
そもそも論ですね。私の解釈としては「専ら開発の中で運転を通じて車の性能を試験する人」です。CAD、CAEやAIなどコンピューター上での検討が脚光を浴びる昨今ですが、これらも所詮は誰かが作ったツールに過ぎず、地球の莫大で複雑な物理現象を完璧に網羅して再現するなんてことは絶対に不可能です。なので開発フローの中では必ず実際に作って確認するフェイズがあります。
車の開発の場合ですと、それぞれ単品での試験(サスペンションで言えばコイルばねなど)、ある程度のカタマリでの試験(同じくストラットASSYなど)を経て、最終的には車両としての試験をクリアして初めて開発が完了するといった流れで試験をします。かなり端折ってますがプロセスについて詳しく知りたい!という場合は是非コメントをください。で、テストドライバーというのはその車両を運転して試験することで車の品質や商品性を煮詰めていく人のことです。
テストドライバーの種類
これは私の中で勝手に分類していることですが、テストドライバーには大きく分けて2種類の仕事があります。1つは「定量評価」、もう1つは「官能評価」です。定量評価とは言い換えれば同じ運転を繰り返して評価するロボット的な試験のことです。例えば耐久試験だったり音や振動の計測などがこれに該当します。これらが毎回バラついていたらモノの評価になりませんからね。対する官能評価は人それぞれの乗り方や感じ方でどう思うか?という評価で、こちらは対照的にある意味バラつきを期待した評価です。一般にテストドライバーというと後者を想像される方が多いんじゃないかな?と思います。よくジャーナリストが試乗でやっているような、「うーん、ここはちょっとアンダー強いなァ」「もうチョット乗り味にしっとり感が欲しいなァ」みたいな。実際のところはどうかというと、基本的には前者の仕事の方が多いです。大体の場合は決まった計測方法と決まった合格基準があるので、それに従って淡々と仕事をこなしていくようなイメージです。まぁそうは言っても大体は想定外のトラブルが発生するのでそう簡単にいかないことが多いですけどね…。
官能評価とは?
で、車好きの皆様が気になるのはきっとCMで流れるような華やかな操縦安定性の官能評価の部分かと思います。私もソレに憧れて業界に入ったクチなので気持ちはよく分かります。
こちらに関してはどのようにやっているかと言いますと、映像でよく流れるような限界いっぱいに攻めてスキール音を鳴らすような乗り方はほとんどしません。お客さんの多くは限界の遥か手前の領域で街乗りをするので、開発も当然お客様目線でその領域を重点的に煮詰めていきます。ここまではどのメーカーも共通するところかと思いますが、じゃあその中でどこを重視してどういう評価をするか?といったところにメーカーの特色が出ます。官能評価に限らずではありますけどね。例えばですが、ダンパーのチューニングなんかでも、乗り心地のバランスを重視して伸び側と縮み側の減衰力を同じくらいに合わせるメーカーもあれば、ハンドルを切った時の内輪の浮き上がりを嫌って伸び側を強めているメーカーもあります。この辺は担当者やメーカーの考え方によるところです。定性的に言えばドライバーが思った通りに走れる、ということをどのメーカーも目標にはしているとは思いますが、どんなドライバーがどんな道をどんな走り方をした時になのか?といった評価前提の差やテストドライバー含めたメーカーの技術力の差、割けるリソースの差で車の仕上がりの差が生まれます。
やはり色々な意味で難しい領域なのは間違いないと思います。何をもって良い車とするのか?は操縦安定性に限らず永遠のテーマであり哲学ですね。でもそれこそが車の面白さなんだと思います。
テストドライバーのウデって?
テストドライバーにも当然ウデの差というのがあるのですが、私が思うにその差は「運転技量と想像力」にあると思っています。
運転技量というのは何もモータースポーツのようにコンマ1秒を削る能力を指しているわけではなくて、狙った運転操作を何度でも同じように高い精度で再現できる能力です。開発の中で車の変化を的確に見抜くためには正確な入力が必要ということです。運転精度がないと車の差が運転バラつきに埋もれて分からなくなってしまいます。そしてそれができる人は車を感じ取る余裕があるため自ずとセンシング能力も高くなります。ここは正にテストドライバーの技術の真骨頂ですね。ベテランと乗り比べると全然できていない自分に驚きます。一朝一夕には出来ない本当に難しいスキルです。
では想像力はと言いますと、こちらはお客様の使い方をどれだけ抜け漏れなく正確に読めるか?ということです。例えば軽やコンパクトであれば運転に不慣れな方が買い物や送迎に使うシチュエーションが想像されますし、セダンであれば高速での長距離移動、オフロード車であれば不整地での過酷な走行など車種による特徴もありますし、他には販売地域によって-40℃から50℃まで気温差があったり、湿度、積雪、舗装状況、平均車速、交通量に至るまで地域やユーザーによって使われ方は千差万別です。それらの中からその車種のメインターゲットをよく理解して、その車が最も期待される使い方を的確に再現する…とそういった意味での想像力です。
総じてウデの良いテストドライバーとは、個人の好みではなくお客様の代表としてお客様の代わりに評価をする能力が高い、ということと考えています。そういう意味ではお客様の代わりに評価することを生業としているジャーナリストにも共通する指標だと思いますね。
おわりに 車は人が作っている
いかがでしたか?一般にはあまり実態が知られていないテストドライバーの中身について私なりに解説させていただきました。今回はあくまで開発全体の一部である実車試験にしか触れてませんが、「車は人が作っている」という感じが伝わっていると嬉しいなと思います。車に触れる時に少しだけ、作り手に思いを馳せていただければ…仕事終わりにヘロヘロになりながら記事を書いている私も報われます(笑)
では今回も最後までありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします!
(アイキャッチ引用元:テストドライバーについて詳しく解説! 現場からの声も | 自動車情報・ニュース WEB CARTOP)

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