【レビュー】ポルシェ911カレラS (992型) 動的チェック 後編

間違いだらけの自動車評論

 すっかり間が開いてしまいましたが、ようやく本稿にてレビュー完結です。今回は個人的にメインである操縦安定性と乗り心地についてと、最後に総評を書いて締めさせていただきます。それでは今回もよろしくお願いいたします。

ボディ&シャシ:当たり前を突き詰めた究極の優等生

 車好きなら誰もがこだわる操縦安定性。一言で言うと911はその一つの”理想”を教えてくれるではないかと思いました。操縦安定性に関して好みは各々あると思いますが、911は実に素直な作り方をしていると感じました。私が感じた特徴は以下です。

  1. ダンピングの効いたしなやかでフラットライドな乗り味
  2. 予見性が高くコントローラブルな限界特性
  3. 正確性が高くオンザレールのハンドリング

1つ目、乗り味についてですが、質感が高いとはこういうことを言うのだと衝撃を受けました。スポーツカーなので決して柔らかいわけではないですが、凹凸の乗り越しからその後の収まりまで車体に伝わってくるショックが実にマイルドでしっとりとしたフィーリングです。ドカンッという入力がなく、それでいて揺れが残るようなこともなく常にフラットに車体が保たれている感覚で、単に乗心地が良いという以上に外乱に対しての車両の安定性が高いという印象です。私がこれまでに乗った中で最もタイヤの接地性が高い車両だと感じました。乗心地と操安性をこれほど高い次元で両立させている車両は初めてで、正にカルチャーショックです。通常、乗り心地というと方向性は二つで、路面からの衝撃を弱めることを優先したフンワリ系か、揺れの収まりを優先したビシッと系のどちらかに大別されます。それぞれは背反の関係にあるのですが、この911に関してはその両方のレベルが非常に高いです。街乗りからワインディングと高速クルーズに対してこれ以上ないバランスと思いました。本来リアヘビーなRRはバランスが悪くピッチングが起きやすいはずですが、全くそういった印象は抱きませんでした。サーキットでの速さを求めるならもっとハードな設定が良いかと思いますが、そこはGT3に任せて公道ベストに的を絞って仕上げられていると感じます。スポーツカーだし普段使いはちょっとね…と言わせない、色々なところに乗っていきたくなる本当にいいセッティングと思います。ちなみに718ボクスターと比較しますと、明確に911の方が高級な乗り味で立ち位置の差がハッキリしています。特にボクスターは上下方向の微振動が結構入ってくるのでちょっとビジーな印象です (10~20Hz辺り?) 。オープンボディの辛いところかもしれません。

 2つ目、限界特性について。ウェット路面で軽く限界を試させていただけたのでそのインプレッションになります。ハイパワーRRに極太タイヤということからピーキーではあるだろうと予想していたのですが、驚いたことに非常にコントローラブルでした。それこそGR86/BRZや718ボクスターよりも簡単にスライドコントロールが出来てしまいます。具体的には、グリップ~スライドまでの繋がりがスムーズなこと、操作に対する遅れが少なく反応自体も安定していることが要因と思います (入力に対して出力のディレイが小さくゲインが安定している) 。当たり前のことが当たり前に出来るので、車が持つズレに気を遣って操作を修正する必要がなく楽に乗れます (フィードバック少な目でフィードフォワード中心の運転で乗れる) 。限界付近は微妙なコントロールが必要なので、スポーツカーにとってはこの特性が何よりのアドバンテージになります。これにはさすがポルシェ、と舌を巻かざるを得ません。

 3つ目、ハンドリングについて。これは2つ目と近しいですが限界に至るまでのコントロール性も抜群です。月並みな表現ですが、ハンドルを切ったら切っただけ曲がるという表現がしっくりきます。普通の乗用車からすると3倍くらい、一般のスポーツカーと比較しても1.5~2倍くらいライントレースの精度が高い印象です。これまた言葉にすると操作に対する反応の遅れと反応の安定性が高い、ということに終始するのですが…実際に乗っていただかないと感動が伝わりにくい気がしますね。通りたいと思ったラインを寸分の狂いもなく正確にトレースしていく様は、もはや意思を汲んで走るロボットに近いかもしれません。スポーツカーの場合は概ねハンドルに対して力強くグイっと曲がるか、クルクル軽快に曲がるかのどちらかのハンドリングになっていることが多いのですが、911の場合はその中間で割と無機質な感じです。下手に味付けなどはせず正しいことを正しく積み重ねる、を徹底しているような印象です。ボディ、サス、ブッシュ、タイヤの剛性が高く、それぞれのバランスがしっかり取れていることが要因かと思います。どこかだけではなく全体を俯瞰して作り込まないとこのレベルにはならない気がしますね。

総評:スポーツカーの教科書

 ここまで長くなりましたが、総じて911とは…スポーツカーの老舗ポルシェがプライドをかけて作っているスポーツカーの教科書のような車と感じました。これまでにカイエン、ボクスターは乗ったことがありポルシェの良さは知っていたつもりでしたが、911は別格ですね。今回はカレラSに乗らせていただきましたが、素カレラ、4S、ターボ、GT3、GT3RSはそれぞれどう違うのかとても興味が湧きました。今では千葉にポルシェ・エクスペリエンス・センターがあり、クローズドコースで性能を引き出すことができるのでお金を貯めて乗りに行きたいですね。読者の皆様もスポーツカーがお好きであれば、是非一度911に乗っていただきたいなと思いました。ちょっと悔しい思いもありますが、やはりポルシェのレベルは高いことを実感した試乗でした。

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