どうもAraiです。今日は操安開発って難しいなぁと思う夢を見まして(?)、是非それを共有させていただきたいなということで連載中の記事を差し置いてそちらについて書こうと思います。引き続き読みたい記事に関しては募集しておりますので希望ありましたら是非お申しつけください。
起:乗りやすい車を作ってくれ
ある日、スポーツカーA車に関し開発を任された西田さん。上司の北川さんから「A車をもっと限界でも扱いやすく、より運転を楽しめるような乗りやすい車にしてくれないかな?」と依頼を受けました。スポーツカー大好き走り屋の西田さんは遂に活躍の時が来た!と大喜びで仕事に取り組みました。
承:で、乗りやすい車って?
さて、どうしたら乗りやすい車が作れるか。西田さんは考えました。自分が今まで車遊びをした中で乗りやすくなったなぁと思った瞬間はどんな時だったか。西田さんは生粋のタイムアタッカーです。車を速く走らせることにかけては人一倍の情熱があり、速いやつこそカッコイイ!という価値観を地で行っています。そんな西田さんにとっての乗りやすい車とはズバリ、コンマ一秒を削り取れる車です。タイヤのインフォメーションがいち早くドライバーに伝わり、また逆にドライバーの操作が寸分の遅れもなく挙動に反映されるダイレクトな車です。イメージとしてはレーシングカートが近いでしょうか?車を速く走らせるうえでは少しの遅れが命取り。ぐにゃぐにゃとした一般の乗用車を速く走らせようと思ったら、それこそ遅れを見越した早め早めの操作が要求されてしまい非常に繊細な綱渡りのような運転が要求されます。その点、車自体の剛性が高ければインフォメーションが伝わるのは早いし、操作に対し車の応答も良いのでタイヤの微妙なグリップ限界を引き出しながら走れます。これだ!西田さんは早速、応答が良くタイヤのギリギリを使いきれる切れ味抜群の日本刀のような試験車を仕立てました。
転:いざ、審判のとき
さぁ、上司の北川さんに試乗してもらう運命の日がやってきました。十分に試験を重ね試験車の仕上がりに不安はないものの、それでもいざとなると不安は拭えません。ボルトはきちんと締めたか?ソフトの実装にミスはないか?車両点検に不備はないか?あれ、ていうか今日始業打刻したっけ?ドキドキしながらもついにその時はやってきました。北川さんが一通りの試乗を終えて一言。
「うーん、確かに凄く変わったのは分かるんだけど、これはちょっと乗りにくいかなぁ…」
はああああああああああああああああああああ!?驚きの声はどうにか心の中に留めたものの、動揺を隠しきれない西田さん。え、いや何が?どういうこと?口に出さずとも表情に疑念が浮かびます。まだハッキリとは分からないまでも、何かが食い違っていることを察した北川さんはこう切り出しました。
「とりあえずさ、一旦乗り合わせしてみよっか」
結:で、乗りやすい車って?(2回目)
訳が分からないまま助手席に乗り込む西田さん。北川さんの運転をじっと見つめる中でふと気付きます。あれ、何か思ったより運転が上手くない…?ていうかちょいちょいタコってていつか刺さりそう!!
そしてそれは逆も然り。ドライバーチェンジして西田さんの横に乗った北川さんもまた思います。いやいやいや、こいつは一体どんな精度で限界攻め続けてるんだよ…何でこんなピーキーな車を手足のように操れるんだ、と。
つまりこういうことです。運転スキルが一般レベルの北川さんにとって運転しやすい車とは、西田さんの思う乗りやすい車とは逆に、「ドライバーの反応遅れや操作ミスを許容するマイルドでまったりとした挙動の車」だったのです。そしてその寛容さが安心感を生み、運転をより楽しめる…というロジックです。当然、その中に速さを求めたりタイムを削るような走りは一切含まれていません。困ったことに実際の車の方向性は正反対なのに、ドライバーコメントだけは合致してしまうという悪夢のようなマリアージュ。これには西田さんもガックリと来てしまいました。
結局、一般のお客さんに販売することが前提の量産車としてこのままの仕様では販売できないという結論になり、仕様は一から練り直し。どうにか他工程のリードタイムを削ることで生産開始時期を後ろ倒す最悪の事態は避けられましたが、西田さんは巻き返しのため心身ともヘトヘト。もう二度とこんな思いはしたくない…
という夢だったのさ!
まとめ:操安開発の難しさ
今回は完全な夢オチでしたが、開発の現場ではうっかりするとこういうことが起き得ます。実際にはそうならないよう節目ごとに報告・連絡・相談をするわけですが、言葉のやり取りだけではどうしても人それぞれが言葉に対して抱くイメージのすれ違いに気付かず、後になって顕在化するということがあります。
これが言葉ではなく数値で全てを表現できればこんなことも起きないのでしょうが、そここそが操安開発の難しさです。数値では表せていないけれど感覚では明らかに違う、こういう感覚の車を作りたいけどどの数字がどうなっていればOKなのかが分からない…。解決方法は二つあると思います。一つは、とにかく失敗を前提に短いスパンで「試作→試験→次の試作にフィードバック」のループを回して目標に近付けていく方法。もう一つは徹底的に感覚の定量化に取り組み、同時にその数値を実現する設計指標を設ける方法。世間一般にはシミュレーションの発展で後者が当たり前に出来るものだと思われている節がありますが、まぁそう上手くいってたら誰も苦労なんてしませんし開発という仕事も要らないですね。現実的な落としどころとしては、将来に向けては後者の取り組みを進めつつ、足元の開発は前者で賄うといったやり方でしょうね。実に示唆に富んだ夢(?)でした。今回は私が上司に言われて心に残ったエンジニア格言で締めたいと思います。
「失敗のない開発なんて有り得ない。もしあるすればそれは開発ではなく単なる過去の焼き増しだ。」

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