Araiです。今回は前回記事 (【レビュー】ポルシェ911カレラS (992型) 静的チェック) からの続きになります。前回は走り出すまでのレビューでしたが、今回は走行レビューが中心になります。恐らく皆様が一番興味のある部分かと思いますので、しっかり伝わるよう頑張って書いていきます。今回もよろしくお願いいたします。
追記:案の定長くなりました…。パワーユニットに対するボディ側のレビューに関してはまた続編に分割してお届けします。
パワーユニット:ターボで際立つポルシェの”凄さ”
エンジンは水平対向6気筒3.0Lツインターボです。従来、カレラ系には3.4Lや3.8LのNAが搭載されていたので、ダウンサイジングターボと呼んで差し支えないと思います。とはいえ3Lなのでそれほど極端なダウンサイジングではありません。この辺りは911のアイコンである水平対向6気筒をmustとした時に、ガソリンエンジンとして効率の良い500cc/気筒をセオリー通り採用した結果と想像します。もちろんこの変更は環境性能向上を目的としたものですが、911においては顧客目線では法規を満たす以上の意味はないと思いますので深追いせず進みます。続いて実際に乗ったレビューになりますが、私は従来のNAカレラに乗ったことがないため他車との比較になってしまうこと、時間が限られていたためモードは最もスポーティなスポーツ+モードのみで試乗していることをご了承ください。。
まず実際に乗ってみた結論を完結に述べますと「最高」でした。私が感じた点を列挙していきます。
- 誰が乗っても速さを感じる十二分の加速力
- ターボを言い訳にしない圧巻のレスポンス
- スポーツカーらしい踏む楽しさを味わえるサウンド
一つ目、450PS/530Nmもの出力はやはり伊達ではありません。ハイパワーに慣れていなければ全開は怖いと感じると思われる加速力です。特に良いと感じるのは出力の出方です。高回転でしか旨味のない高出力ではなく、街中+αの回転数から誰でもはっきりと速さを感じられる実用的かつ実戦的な特性です。ここはターボの恩恵を大きく感じます (NAでは一般に排気量1Lに対して100PS/100Nm程度が限界で、高出力を狙うほどパワーバンドは高回転に寄り実用域は逆に遅くなります) 。カタログの数値も立派ですが、実際に走らせるとカタログ数値以上に速いエンジンと感じました。それでいてRRを活かした抜群のトラクションのおかげで姿勢を乱すようなことはなく、きちんと使い切れるハイパワーになっていることがさすがです。これはサーキット走行等でも速いと思います。
二つ目、ターボらしからぬ抜群のレスポンスの良さ。私的に最も感動したポイントです。ここで指しているレスポンスは、一般に良く議論される空吹かしの話ではなくて、走行中にアクセルを踏んでから実際に車が加速するまでの遅れです。ダウンサイジングターボにすることによってスポーツカーとして最もネックとなるのがここだと思います。どうしても構造上ターボは遅れが発生します。昔ほどではないにせよ今でもNAに比べればラグがあり、アクセルオンからブーストが立ち上がってフルパワーになるまでの遷移は感じ取れる車が多いです。特に高出力を狙うスポーツカーでは顕著です。が、今回の911は驚いたことにそれを一切感じさず、あたかも出来の良いNAエンジンのように踏んだ瞬間から抜群の瞬発力で加速してしまいました。下手なNA車よりもよほど素直で気持ちの良いレスポンスです。スポーツ+モードなのでアンチラグ制御が働いているのだと思いますが、変に飛び出したりむやみに炸裂音を鳴らすこともなく自然な仕上がりになっていることが好印象でした。私が経験したどのターボ車よりも素晴らしいドライバビリティであり、レスポンスは高いながらもゲインは過剰でなく非常に乗りやすい印象でした。これは是非皆様にも体感していただきたいと感じました。
三つ目、顧客が期待する大きなポイントと思われるサウンドについてです。NA時代の911に乗ったことがないので直接比較は出来ませんが、絶対的に気持ちのいい、いわゆる踏みたくなるサウンドだと感じました。本当に純正か?と思うレベルの迫力のある音量と音質です。アイドリングでもそれなりの音量ですが、走り出して踏み込んでいくとアクセル開度とエンジン回転数に応じて迫力が増していき、全開では相当な音量に…外から聞いていてもよく聞こえます。音質としては水平対向6気筒らしく粒が揃っていて、ハイパワーらしく音圧があり迫力を感じるサウンドです。今のご時世なのでスピーカーからの演出音もあるとは思いますが、少なくとも私見ではフラット6らしい気持ちのいい音と感じました。近年は環境対応のため小排気量、少気筒のエンジンが増えてきて官能的と呼べるサウンドは少なくなっていると思います。その中にあって誰もがポルシェらしいと感じるサウンドと官能性を守り続けていることはこの車の大きな訴求力になっていると感じました。
総合的にスポーツカーとして求められる、速さ、気持ち良さを非常に高い次元で実現しているレベルの高いパワーユニットです。他の追随を許さないポルシェが持つ技術力と志の高さを感じられました。
今回はここまでにしたいと思います。スポーツカーの華である操縦安定性に関しては続編のボディの中で触れていきます。今回もお付き合いいただきありがとうございました。続編でも引き続きよろしくお願いいたします。
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